「矢崎藍の付けてみませんか」コラム 中日新聞(木)朝刊・東京新聞(木)夕刊掲載です

                                               ★矢崎藍の連句わーるどへもどる→


中日新聞で1990年から始まった付け句コラムです。募集コラムのあと、読者の付け句を紹介します。基本的にコラムですので、入選順位、賞のようなものはありません。付け句は活字メディアでの募集ですのではがきでご参加ください。2001年10月から、東京新聞にも掲載。応募者は中部地方と首都圏に広がって、ちょっと激戦。皆さんがんばってね!
過去のコラム1999年−2005年このコラムのそもそも   

前句   思いがけない好きのスタート  さくら

「募集」中日・東京11月02日(木)
 (思いがけない好きのスタート   さくら)
よし決めた毎日メールしてやるぞ       グー
文具店気付けば君の名試し書き    演劇部員

 恋句は尽きないですねえ。
病みあけの小さな背中包む風        佳代
ハークション誰かに呼ばれ鼻毛抜く    喜いち

先週末とよたキャンパス連句まつり盛況終了。計一万余句のご応募ありがとうございました。
さて、次のお題です。
  足がもつれてもう踊れない    風
この七七句に五七五句を付けてみませんか。
 (足がもつれてもう踊れない)
きれいだとかすれた声でささやかれ    あんな
       
あれ、こんな甘い場面もいいですね。経験だけでなく小説の場面のように自由に想像して。
 (足がもつれてもう踊れない)
売り上げのグラフで二位を三ヶ月     レッツ

仕事、遊びに多忙な日々ですね。この浮き世に踊らされているわれら現代人の暮らしもどうぞ。この際愚痴もいいですよー。付け句の発表は十一月から十二月までですから、師走、クリスマス、冬の風景句もぜひ付けてくださいね。そして、国内政治、国際問題など、時事句はたくさん付くはず。名句、迷句を期待してます。大笑いも。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を併記。十一月十一日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「こっとりと」中日・東京10月26日(木)発表6
 (思いがけない好きのスタート さくら)
銀色の坂の真上の望の月        あおい
さわさわと二千年前の稲穂波    岩津志乃ぶ

 弥生時代、稲穂の風の中の男と女が、私たちにDNAをつないでくれていたーー。
点々と弾む絵の具で見るヴェニス    眠り猫
 (思いがけない好きのスタート)
ふいうちにぽんと頭を叩かれて     うつほ

高校生さんから。九千句以上の応募がありましした。頭を叩かれる句、落とした消しゴムを拾う句が多かったんですよ。ええ、今も心は同じ。
 (思いがけない好きのスタート)
シャーペンをくるくる回す器用な手 もんちっち

 彼の手さきにふと見とれてるうち、くるくる心が巻き込まれちゃったあ!
冥王星仲間はずれの夏休み        さら
 いじめないでよー。
 (思いがけない好きのスタート)
二次元の萌える娘に恋をする     根暗同盟

ときに漫画、アニメの娘に逃げてく男の子たちです。三次元の娘は不可解複雑。眩しいんだ。
 (思いがけない好きのスタート)
携帯のメール一言絵文字なし      リボン

 激情。
 (思いがけない好きのスタート)
こっとりと心が揺れる音がした      紫音

 運命。

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「流れ星」中日・東京10月19日(木)発表5
 (思いがけない好きのスタート さくら)
木の実降る夜の長きにペンをとる    ひよこ

 パソコンでなく手で書く。秋。
投句欄母初めてのペンネーム     エゴの木
 (思いがけない好きのスタート)
鬼上司飲めばシクシク泣き上戸     しろ子
冬瓜と呼ばれいつもの隅の席        郷

 冬瓜も料理しだいで味があるのよ。
 (思いがけない好きのスタート)
憲法をきちんと守る裁判官       江戸七
 
「君が代判決。強制したり罰することはできねえって。あたりめえだ」
秋湿りいつか大きな傘の下        みね
 しっとりとふたり。え、核の傘のこと?
 (思いがけない好きのスタート)
大空に一瞬見せて流れ星        まい子

ここでお誘いです。来週、愛知県豊田市の桜花学園大学で、第六回「とよたキャンパス連句まつり」(豊田市等共催)を行います。「全国高校付け句コンクール」は九千余句から入選178句発表。このコラム投稿一般千余句からも三百句短冊に書いて展示。学生の前句に付け句したり、連句人との尻取り連句遊び。「連句って何」というかたはぜひ。当日は学祭で屋台が出ます。ご家族連れでどうぞ。10月28日(土)29日(日)11時から。詳細問い合わせは桜花学園大学(電話0565―35−3131)へ。

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「地動説」中日・東京10月12日(木)発表4
 (思いがけない好きのスタート   さくら)
彼岸花見つけた旅の道連れと    もんたろう
さりげなくケータイ教え秋麗ら      相坂康

 秋の旅は、赤い彼岸花との出会いから。
 (思いがけない好きのスタート)
誰か知る天目茶碗のわが秘術       耕人
秋刀魚食べ骨格標本できあがり    近藤富子

 これは食い気。なんじゃ。この満足感は。
 (思いがけない好きのスタート)
無防備な笑顔見ちゃったもうダメだ   ミモザ
弱いのと言いつつ舐めるブランデー   寿美麗

 目が誘ってるよー。
動機には不純も見えるペン習字  植田喜久男
ライバルは金持ちなのか若いのか     草蝉

 (思いがけない好きのスタート)
火炎土器誰だナマコを煮てるのは    タヌ公

 ナマコなんてものを初めて食べたやつがいる。私たちの祖先の誰か。縄文時代?え、煮たの?
 (思いがけない好きのスタート)
フェルマーの最終定理を考える    萩元拓真

 数学への興味。人と生まれ、知を追究するよろこびを知ったとき。
星月夜この身に感じる地動説     渡辺陽子
 (思いがけない好きのスタート)
相対性理論のはての核兵器       よしひこ
  
 そういうつもりじゃなかったと、ひとりひとりの科学者はいうのだけれど。

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「髪縛る」中日・東京10月5日(木)発表3
 (思いがけない好きのスタート    さくら)
ふと君が私の名前呼び捨てて     朝凪利緒
ひっぱりたい腰まで伸びた長い髪   葉月達彦

 高校の教室から。時間という財産をたくさんもってる作者たちです。
 (思いがけない好きのスタート)
轆轤引く指しなやかに悩ましく      タマ助
髪縛る後ろ姿を見つめてる       しゃんこ

 恋は衝動だよねえ。
 (思いがけない好きのスタート)
参観日よそん家パパにときめいて   大岩恵子
柴犬とチワワのリードクロスして    あんでん

「犬がじゃれあって、飼い主もーー」まあ、この先、もつれ合いそうな関係。
 (思いがけない好きのスタート)
キムチ鍋義理ゆえ出した箸のはず   右京清子
孫がきていやいやながらピザがきて    旦喜

 爺はお財布。しかし世界中のメニューを食べてこれからどうなっちゃうんだろ。
 (思いがけない好きのスタート)
若嫁の包丁軽ききざみ食         ふさ子

「三世代同居九ヶ月。毎日笑い声の中92歳の介護スクラム順調です」
 (思いがけない好きのスタート)
とつくにの孫と曾孫にかこまれて    伊藤いつ

 昔、想像できなかった未来。
金婚の父母が語らぬ初デート     位田仁美
(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「ままごとの」中日・東京9月28日(木)発表2
 (思いがけない好きのスタート    さくら)
肩にのるナナホシテントウひと休み もっ&ふう
風のみが遊び相手の猫じゃらし      恵子

 ひと懐かしい秋です。
 (思いがけない好きのスタート)
めがねとるあのこのすがたはじめてだ 山口多聞

 高校生さんの句ですよー。
 (思いがけない好きのスタート)
夜二時の寝ぼけと称したメールから
 ぶっかけ将軍
徹夜してメールを続け朝がきた   ミルティー

 これもきぬぎぬの別れというのかな。ここ数年で激変した
メール社会。十年後は?
 (思いがけない好きのスタート)
丸刈り君青いハンカチ涼しげで    かよねこ
ハンカチにタネも仕掛もない王子   伊藤千敏

 甲子園の王子さまの句がどっさりきました。
 (思いがけない好きのスタート)
マンゴーが私に食べてと言っている  おたふく
エスカルゴ巴里にて海鼠チェチュドにて  風露

チェチュドは韓国済州島。食い気の旅ね。
 (思いがけない好きのスタート)
ままごとのパパとママとが現実に   ハッピー
ちゃん付けで古女房を呼んでみる     凸稚

 まだ呼んでないかたどうぞ。人生変わるかも。
 (思いがけない好きのスタート)
迂闊にも近づき過ぎた定置網      小島武

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「ズキンドキン」中日・東京9月21日(木)発表1
 (思いがけない好きのスタート   さくら)
ズキンドキン君の視線につかまって    一子

 いよう。秋だよ、恋だよ。
初めてのサックス持つ手危なげに 鬼塚かなよ
目とか髪鼻より上は良かったなあ    マイム

 うふふ。何度もおもいかえしちゃって。
 (思いがけない好きのスタート)
ウオーキングお尻の締まったおじいさん  圭子
 
 うわっ。おじいさんも見られてるよっ。
 (思いがけない好きのスタート)
石は星のかけらなんだと言った君     青麦

 ロマンチストめが。
 (思いがけない好きのスタート)
チャンネル権孫にゆずって見たサッカー  三子
チャンネル権祖母にとられて見た落語 三子の孫

 二枚はがきがきましたよ。お孫さんは二十一歳男性ですって。
付け句の会話。ええなあ。
 (思いがけない好きのスタート)
クメールの石像の笑み艶然と みの虫アッパ

 「八月中旬から二十日ほどカンボジアへ遺跡の調査に行ってきました」
  (思いがけない好きのスタート)
ひとつ家に寝たり異国の大統領     桃太郎

 あの日からの蜜月だったか。
 (思いがけない好きのスタート)
人生で一度限りの交差点        草笛奏
叶うならリセット押して位置につく       晶

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「しめきりですよ」中日・東京9月14日(木)
宿題はもう出されましたか。
(思いがけない好きのスタート さくら)
くしゃくしゃの茶髪なんとかならないの  けい

 高校の教室からも句が飛来中ですよ。今回は、「全国高校付け句コンクール」(豊田市・桜花学園大学他主催)が同じ前句でいっしょに募集をしているのです。(高校の集団応募の詳細問合わせは桜花学園大学生涯学習研究センターへ。п@0565-35-3131。インターネットでもご検索を。こちらはしめきりまでまだ1週間あります)
 さて、胸をうつ瞬間は、年齢に関係なくやってきます。明日くるかもよ!
(思いがけない好きのスタート)
幼な名でふいに呼ばれた街の角      聖子

 恋句を考え、場面を思い浮かべると、脳を快く刺激して、体が若返るんですって。
 (思いがけない好きのスタート)
オシリスとイシスの夢をつむぐ秋     健悟

 エジプト神話の兄妹神で、夫婦でもあります。王座奪還をめぐる戦いの物語。想像はどうぞはるかに時空をこえて。詩人は抽象世界にも飛翔して。ええ、大笑いも歓迎ですよ。発表が九月から十月いっぱいになりますので、秋の風景の句もぜひくださいね。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を明記。九月十六日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)
「募集」中日・東京9月7日(木)
 (今日をひたすら鳴いている蝉 京)
好きだっていえない好きもあるのです  石ころ
合宿の大鍋にまでまぜる恋        佳代
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
草いきれ真っただ中の尾瀬の道     懐堂
夏にして暖とる海女の艶話      舘まもる
 (今日をひたすら鳴いている蝉)
門柱の上を居場所と決めた猫      きみ子

蝉さんの句に付け句多数ありがとうございました。懸命に生きるわれら仲間たちでした。掲載できなかった佳句残念。次回をお楽しみにね。
さて、女子学生さんのこんな句を発見。
 思いがけない好きのスタート  さくら
 今度はこの七七句に五七五句を付けてくださいな。ご年配のかたもみずみずしい心で。
 (思いがけない好きのスタート)
星を見て今夜も君と長電話       美恵

 うまくいきそう? きっかけは? 相手の姿、性格は? 経験だけでなく、ひとさまの話、願望(!)の場面、物語。自由にご想像を。
 (思いがけない好きのスタート)
冥王星軌道ななめの美しさ        藍

「好き」の対象は食物、動植物、趣味、妖怪、なんでも。大笑い、時事句、秋の風景句歓迎。
付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を明記。九月十六日(土)までにご投かんを。五七五句ですよ!

(やざきあい 作家・桜花学園大学教授)

「矢崎藍の付けてみませんかコラムのそもそも」
このユニークなる(伝統と現代の衝突じゃぞ!)中日新聞の付け句コラムは1990年にはじまっています。最初は朝刊の「辛口診断」という時評コラムの中でした。矢崎藍担当コラムで、ある日、付け句の話題を紹介して、「あなたも付けてみませんか」と、(いわば言葉の綾で)文章をしめたところ、読者から付け句がきたのです! 掲載するとまたきた! やっほっほ、どーしよー! とうれしい悲鳴が続いて、とうとう「募集、しめきり、発表」という形をとるようになりました。ちなみに最初の記念すべき前句と付け句は
     恋なんてどうでもいいと古稀は言い  敏女
       それでも赤い薔薇が好きなの、  しげる

でした。くわしくは『連句恋々』(筑摩書房)に書いてあります。
1996年に「矢崎藍の付けてみませんか」として独立、日曜日の読者総合特集ページへ。
1998年に(金)夕刊に引っ越し、文化欄「矢崎藍付けてみませんか」 
2001年10月から東京新聞にも同時掲載となり、
2003年6月から朝刊掲載となり現在に至っています。
 募集10日後しめきりがふつうで、5、6回のコラムの中で発表となります。「今を、共に、語る!」という対話的付け句コラムの内容は終始変わっていません。
『平成付け句交差点』(筑摩書房)はこの欄の精選付け句集です

◆過去のコラム1999−「あと一年で二千年なり」1/8−2/12) 「働きすぎてちょっと疲れて」(2/26−4/9「不覚にもまた恋をしそうな」(4/16−6/4)「むくむくと入道雲が立ち上がり」(6/11−8/6)「電子レンジがチンと鳴る夜」(8/13−9/24)「急がないのがうちのモットー」(10/1−11/5)「濃すぎるかしらけさの口紅(11/19−12/24)◆2000「 朝の光が透けるカー テン」1/7−2/18)「不況にもめげぬ男はつらいこと」( 2/25−4/14)「あなたを見てたずっと前から」(4/21−6/9)「ぼんやり見てる窓越しの雨」(6/16−7/28)「氷カランと麦茶の香り」8/4−9/22)「ふと目が合った恋のはじまり」(9/29−11/10)「信号がもうすぐ赤に変わります」(11/17−12/22)◆2001「2001年元旦の膳」(1/5−2/9)「振り返ったら妻がにっこり」( 2/16−3/30)「あなたが好きよ規格はずれで」(4/6−5/18)「土曜二時半雑踏の中」(5/25−7/6)「誰にも内緒そっと寄り道」7/13−9/7)「あなたにひとつ言いたいことが」(9/7-10/26)「秋深き隣は何をする人ぞ」(10/26-12/21)「ざぶりとつかる湯はあふれ出て」(12/28−2/8)「おおきくひとつ息をしてみる」( 2/15−4/12) 「さわさわとふたりの中を過ぎる風」(4/19-6/14)母さんに会ったら涙こぼれそう(6月21日-8 月6日)命あふれて好きな日盛り」(8/2-9/27)横顔の君にきょうこそプロポーズ  ななしげ(10/8-12/18)「恋情のただやるせなき雪ぐもり   聖子」(12月25日-2/25)「いち、にっ、さんしとつづく人生   おはぎ(2/26日ー4月23日)「ぜんぶ話すよ今までのこと  うさぎ(4月23日ー6/19)水 晶玉に未来尋ねる R(6/19ー8/21)「恋という熱じわりあがって おはぎ(8/21ー10/30)「体育館の窓の夕映え   ジュン」(10/30ー12/25)いやですいやだ絶対いやだ    ザリ(12/25-2/26)ふたりだと胸がつまって苦しいの  みのり(2/26-4/22)今ならいいわ誰も見てない 公仁子」4/22-6/17「月は涼しく中天にあり    霞6/17-8/5)「 父と子の言葉とぎれて蝉の声  麓天」8/5-9/23)「君が好きだと気づく瞬間    奏」9/23-11/11)ツ リーのてっぺん星が見ている 成富屋11/11-12/30)いつのまに雪はしずかに降りはじめ あづさ」12/30-2/25)「 さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉」2/25-4/21)2005 魔法使いが杖をひと振り  ひわ(4/21- 6/2) アスファルトをうつ大粒の雨  聖子(6/2- 7/20)さあ今日も長い道のり一歩ずつ とろっぺ(7/20) 呼び出し音に胸が高鳴る 翠(9/15-11/3)金色の落ち葉かさこそ吹かれてく   洋(11/10-12/22)大根も煮えおでんふつふつ  健(12/22-2/23)愛してるって言ってちょうだい  藍(2/23-4/13)泣きながら一人生まれてきたんだよ かよねこ(4/13-6/1)ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月(6/8-7/20)今日をひたすら鳴いている蝉   京(7/27-9/7)