中日新聞矢崎藍の「付けてみませんか」「矢崎藍の付けてみませんか」コラム 中日新聞（木）朝刊・東京新聞（木）夕刊・掲載です
中日新聞で１９９０年から始まった付け句コラムです。募集コラムのあと、読者の付け句を紹介します。基本的にコラムですので、入選順位、賞のようなものはありません。付け句は活字メディアでの募集ですのではがきでご参加ください。２００１年１０月から、東京新聞にも掲載。応募者は中部地方と首都圏に広がって、ちょっと激戦。皆さんがんばってね！
◆過去のコラム1999年−2005年◆このコラムのそもそも
前句
恋とは不意にやってくるもの 卓
| 「募集」中日・東京7月19日（木） |
| （恋とは不意にやってくるもの 卓） 降り立ちし街の匂ひがなつかしく 渡辺多美子 ひぐらしの鳴く坂道を手をつなぎ 凜 （恋とは不意にやってくるもの）。 付添いで娘とジャニーズコンサート あきえもん チケットへ並ぶ徹夜の前後ろ 平松由美江 夏祭りいっしょに行こうと照れ笑い 吉田彩 楽しい恋句をたくさんありがうございました。 さあ、つぎの宿題は江戸時代の句。 市中は物のにほひや夏の月 凡兆 この五七五句に七七句を付けてみませんか。 この発句に芭蕉さんが次の七七句を付けてます。 （市中は物のにほひや夏の月） あつしあつしと門々の声 芭蕉 高名な付け合いです。では現代人の生活も。 （市中は物のにほひや夏の月） もんじゃ焼き屋のにいさんの汗 メルモ 付け句は経験でも、思い出でも、想像でも。 （市中は物のにほひや夏の月） いま帰るよとかける携帯 ゆき坊 夏の風物。恋句、大笑い、時事句歓迎。旅先、外国のバザール風景も。宇宙、おばけなんでも登場させて二句の場面を作って遊びましょ。 付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず書いて。七月二八日（土）までにご投かんを。七七句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
| 「伊勢の夏」中日・東京7月12日（木） 発表6 |
| （恋とは不意にやってくるもの 卓） 夏来たる働く人の汗光る 島田有佳 型を抜く迷わぬ刃先伊勢の夏 あんでん 伊勢型紙。職人芸のかっこよさ。 （恋とは不意にやってくるもの） １００円のマックシェイクを二人飲み 吉田生光 若さは百円玉で輝いちゃうのだ。 背中見てときめいている自分に「喝！」山際綾夏 これもまた躍動する若い心の動きですね。 （恋とは不意にやってくるもの） 相談が告白になる夜の雨 泰枝 ああ、どうしよ。 精霊をのせてふわりと蛍飛ぶ 葵 たぶん、そういうさだめなんだー。 （恋とは不意にやってくるもの） 目隠しをされて蓮華の首飾り 服部哲也 またあなたわざとぶつかり逃げてゆく 恵 「中学時代の思い出です」 （恋とは不意にやってくるもの） 痛いのはここ？とまさぐる白い指 よしお 尻が合いゴメンと振り向き知り合いに 豊田恵子 ふふ。 （恋とは不意にやってくるもの） お見合いの白湯にさくらが咲きました 岡田銕夫 ものにしたそこが地獄の一丁目 伊藤千敏 めでたしからはじまる未知の人生。 （恋とは不意にやってくるもの） お見舞いのつぼみの百合が全部咲き 伊藤紘美 (やざきあい 作家･桜花学園大学客員教授) |
| 「テレパシー」中日・東京7月5日（木） 発表5 |
| （恋とは不意にやってくるもの 卓） 生ビール私が大で彼は小 小嶋武 くわー、この喉ごしのはて。 （恋とは不意にやってくるもの） かき氷きいんと頭絞られて 菅野八重子 梅干しの酸っぱさほどの恋心 近藤スズ そんなに酸っぱい恋をなさいましたか、はあ。 （恋とは不意にやってくるもの） 笑うツボ同じ人だと気付いた日 武田礼子 小柄でも抱擁力は二人前 かよねこ もちろん包容力も。 （恋とは不意にやってくるもの） 意地悪をした子が今の夫です 嘉男 今はもうカカア天下で無事に暮れ 青柳善作 （恋とは不意にやってくるもの） 九条は守るなんちゃって照れちゃって ぼくぼく いまどき高校生の言、頼もしきかな。 （恋とは不意にやってくるもの） マーキングしていたジョンがかたまった 武 これはワンちゃん。 牛小屋の哮り繁殖の儀式なり 三郎 「牝牛は事を終えた後、憑き物の落ちたように静かになります」 （恋とは不意にやってくるもの） 山小屋を眠れずに出て天の川 ふうろ 眠れないのはね、何かを感じすぎてるから。 （恋とは不意にやってくるもの） 夏銀河億光年のテレパシー 恵紅 (やざきあい 作家･桜花学園大学客員教授) |
| 「稲光」中日・東京6月28日（木） 発表4 |
| （恋とは不意にやってくるもの 卓） 雲一つ黄金の波の麦の秋 近藤富子 つないだ手燕がピューンとくぐり抜け ターコ 輝く夏の自然と同化する恋！ （恋とは不意にやってくるもの） 白牡丹くづるる朝にメール受く 石田喜美子 うふ、崩れようか。 （恋とは不意にやってくるもの） スイミングコーチのクロール肩の線 アクア バスケ部のシュートを決めるにきびづら 愛奈 じっと見てるひとがいるのを知ってた？ （恋とは不意にやってくるもの） 夏服の彼女意外にカーブあり 古事郎 じろじろじろ。コラ！ （恋とは不意にやってくるもの） ふと気付く大切な人はすぐそばに 福田亜矢子 いつも見る後ろの席へビームかな 木村直貴 届くか！ （恋とは不意にやってくるもの） 退職の書類説明するアルト 誠 「この会社にこんなしっとりした女性がいたとはじめて知って、 辞めたのを後悔。どうしよう」 （恋とは不意にやってくるもの） けとばした空き缶彼女に当たってね 眠り猫 運命とはそんなもんかもしれませんね。 （恋とは不意にやってくるもの） 稲光天地で握手するように 青麦 (やざきあい 作家･桜花学園大学客員教授) |
| 「腕まくり」中日・東京6月21日（木） 発表3 |
| （恋とは不意にやってくるもの 卓） 青田風犬の散歩と万歩計 ひよこ さあ、夏！ とにかく出かけましょ。 やあどうも今日も出合った縞のシャツ 右京清子 ほらね。 （恋とは不意にやってくるもの） クールビズ胸元チラリ眩しくて タマ助 腕まくり時計はずした白いシャツ 紅 女性の目。腕まくりの句多かったですよ。 で、時計はずすでしょ。それからー。 （恋とは不意にやってくるもの） 金がない先月失職したばかり 文太 「タイミング悪いっす」リストラばかり進んで、なんと厳しい 競争社会。 年上の彼女が払うデート代 バスラ （恋とは不意にやってくるもの） 諦めぬ脱パラサイトいつの日か 万感の母 「願わくば孫の顔など見てみたい」ううむ。自立の キーワードは恋かもしれない。 （恋とは不意にやってくるもの） 誠実に短歌メールに返歌する 晶 すばらしい時代がきたけれど。 信じてもいいかなネットの君の声 千奈 チャットする千年前から知るごとく あゆ ふふ、お互いインターネット時代に跳梁する魅惑の 吸血鬼くんかもしれない。 （恋とは不意にやってくるもの） 四十年の思い告げられ夏の海 上弦の月 (やざきあい 作家･桜花学園大学客員教授) |
| 「急停車」中日・東京6月14日（木） 発表2 |
| （恋とは不意にやってくるもの 卓） 新緑の候で出したら来たかしこ 喜久男 昔ながらのお手紙の挨拶もよろしいですねえ。 キャンパスにはしか注意と張り紙が 山本尚子 この熱、ほんとにはしか？ （恋とは不意にやってくるもの） 駆け込んだエレベーターに二人きり ミモザ あっ痛い満員電車で足を踏み 塩洋子 「踏まれた彼がスミマセンといい、下車したホームで私があやまってーー」 （恋とは不意にやってくるもの） 写メールはショートヘアーで照れる君 佳代 きゃ、髪切ったの！ ビジュアル情報も「狙い定めて打つものなんです」って、佳代さん。 アドレスを変えた理由が知りたいわ 水谷裕子 ふっと不通になるのも今の恋。 （恋とは不意にやってくるもの） 実を結ぶ確率低い賭ばかり 喜水 駆け落ちの果てが熟年離婚とは 根岸一枝 たかが恋。されど恋。 （恋とは不意にやってくるもの） よく聞いて今日から私旧姓よ ウッチー 急停車卒寿と喜寿の出発点 脇田鴻洋 神様だけが知っていた未来。 （恋とは不意にやってくるもの） 昨日まで見てた世界はプロローグ 草笛奏 噴水のしぶきが天にはじけてる ぴょん太 （(やざきあい 作家･桜花学園大学客員教授) |
| 「頭蓋骨」中日・東京6月7日（木） 発表1 |
| （恋とは不意にやってくるもの 卓） ビー玉に煌めく光初夏の風 境野真美 夏なのに手と手が触れて静電気 千夢 十代の句ですよー。 （恋とは不意にやってくるもの） 吊り革に気持が揃い手が揃い 多々志 乗り換えのラッシュなんのと席譲る 渡無参 （恋とは不意にやってくるもの） ハワイ焼け白い部分に一目惚れ 藤村力田 白い部分てどこでしょうね。読者の想像にお任せ。 え、妄想ですって？ （恋とは不意にやってくるもの） ハートの矢ご縁奇縁にくされ縁 久美 さきのことなどわからないけど。 （恋とは不意にやってくるもの） 君あての初めてメールいざ送信 一子 携帯のバイブと鼓動が共鳴し ゴロー （恋とは不意にやってくるもの） 名刺裏自宅の住所書いてあり のんぷ 「十三年前取引先の人との仕事の最終日。ここで別れればそれっきり。思い切って住所を書いて渡した名刺。ところが彼も同じことを考えていて、くれた名刺に住所が。彼と結婚して十年目です」 （恋とは不意にやってくるもの） 髪染める妻の項の艶やかさ 裏表 これを至福という。ごちそうさま。 （恋とは不意にやってくるもの） レントゲン技師の見惚れた頭蓋骨 ふさ子 (やざきあい 作家･桜花学園大学客員教授) |
| 「しめきりですよ」中日・東京5月31日（木） |
| 付け句の宿題はもう出されましたか。 （恋とは不意にやってくるもの 卓） メロンパン半分割ってくれた指 めるも 学生さんですよー。 （恋とは不意にやってくるもの） 新緑の林に君の声澄んで ケキョ これは恋人かしら、もしかして鶯さんかな。 （恋とは不意にやってくるもの） 夏帯をきりりとしめて振り向いて ときよ 「借金？ だめよ」なんて姐御かっこいい。映画や小説の場面をとりいれて想像していいですよ。 俳諧（連句）では伝統的に四季の自然と人事を詠みますが、中でも四季では月と花の句、人事では恋の句を大切にします。ええ、振られても、かなわなくとも想うことが美なのです。このコーナーでも、高校の授業からの付け句応募がありますけれど、先生がたの「前句は恋の句がいいです」という声も多いです。（今年の第五回全国高校付け句コンクールは六月に前句を発表します。資料請求は桜花学園大学生涯学習研究センター0565-35-3131へ）さて、恋に年齢なし。 （恋とは不意にやってくるもの） ため息をつく梔子の八重の花 藍 付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず書いて。六月二日（土）までにご投かんを。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大客員教授） |
| 「募集 恋とは」中日・東京5月24日（木） 募集 |
| （まいどのことでおせわさまです たつみ） エコバック玄関先でお留守番 あんでん 「ノーレジ袋の初心者です。すぐ忘れて」 （まいどのことでおせわさまです） 隠蔽と偽装捏造謝罪して 本多雅子 裏金は球界政界アラそうかい 田口寒村 店員に賞味期限を直す指示 加藤太美治 今回前句は皮肉なニュアンスを含んでいたので、厳しい時事句がたくさんきましたね。もっと発表したいのですけれどここで打ち止め。多数ご応募多謝。さて次の前句ですよー。 恋とは不意にやってくるもの 卓 この七七句に五七五句を付けてみませんか。 （恋とは不意にやってくるもの） 割った皿ふたりで拾うスミマセン 利己 恋はきっかけ。ご自分の経験でも、（あ、これから経験したいことでも）ひとさまの話でも。楽しんで想像して、二句で場面を作ってください。 （恋とは不意にやってくるもの） のけぞって笑う少女の喉白く 聖子 お好みのタイプは？ 恋に年齢なし。昔々の思い出も。大笑い歓迎。季語を使ったりして、夏の風景もぜひ。脳と心の体操フレーフレー。 付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネームの方も本名を必ず書いて。六月二日（土）までにご投かんを。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大客員教授） |
◆「矢崎藍の付けてみませんかコラムのそもそも」
このユニークなる（伝統と現代の衝突じゃぞ！）中日新聞の付け句コラムは１９９０年にはじまっています。最初は朝刊の「辛口診断」という時評コラムの中でした。矢崎藍担当コラムで、ある日、付け句の話題を紹介して、「あなたも付けてみませんか」と、（いわば言葉の綾で）文章をしめたところ、読者から付け句がきたのです！ 掲載するとまたきた！ やっほっほ、どーしよー！ とうれしい悲鳴が続いて、とうとう「募集、しめきり、発表」という形をとるようになりました。ちなみに最初の記念すべき前句と付け句は
恋なんてどうでもいいと古稀は言い 敏女
それでも赤い薔薇が好きなの、 しげる
でした。くわしくは『連句恋々』（筑摩書房）に書いてあります。
1996年に「矢崎藍の付けてみませんか」として独立、日曜日の読者総合特集ページへ。
1998年に（金）夕刊に引っ越し、文化欄「矢崎藍付けてみませんか」
2001年10月から東京新聞にも同時掲載となり、
2003年6月から朝刊掲載となり現在に至っています。
募集１０日後しめきりがふつうで、５、６回のコラムの中で発表となります。「今を、共に、語る！」という対話的付け句コラムの内容は終始変わっていません。
『平成付け句交差点』（筑摩書房）はこの欄の精選付け句集です
◆過去のコラム１９９９−「あと一年で二千年なり」（１／８−２／１２）
「働きすぎてちょっと疲れて」（２／２６−４／９）「不覚にもまた恋をしそうな」（４／１６−６／４）「むくむくと入道雲が立ち上がり」（６／１１−８／６）「電子レンジがチンと鳴る夜」（８／１３−９／２４）「急がないのがうちのモットー」（１０／１−１１／５）「濃すぎるかしらけさの口紅｝（１１／１９−１２／２４）◆２０００「
朝の光が透けるカー テン」（１／７−２／１８）「不況にもめげぬ男はつらいこと」（
２／２５−４／１４）「あなたを見てたずっと前から」（４／２１−６／９）「ぼんやり見てる窓越しの雨」（６／１６−７／２８）「氷カランと麦茶の香り」（８／４−９／２２）「ふと目が合った恋のはじまり」（９／２９−１１／１０）「信号がもうすぐ赤に変わります」（１１／１７−１２／２２）◆２００１「２００１年元旦の膳」（１／５−２／９）「振り返ったら妻がにっこり」（
２／１６−３／３０）「あなたが好きよ規格はずれで」（４／６−５／１８）「土曜二時半雑踏の中」（５／２５−７／６）「誰にも内緒そっと寄り道」（７／１３−９／７）「あなたにひとつ言いたいことが」（9/7-10/26）「秋深き隣は何をする人ぞ」（10/26-12/21）「ざぶりとつかる湯はあふれ出て」（１２／２８−２／８）「おおきくひとつ息をしてみる」（
２／１５−４／１２） 「さわさわとふたりの中を過ぎる風」（4/19-6/14）「母さんに会ったら涙こぼれそう」(6月21日-8
月6日)「命あふれて好きな日盛り」（8/2-9/27）「横顔の君にきょうこそプロポーズ ななしげ」(10/8-12/18)「恋情のただやるせなき雪ぐもり 聖子」(12月25日-2/25)「いち、にっ、さんしとつづく人生 おはぎ」（2/26日ー4月23日）「ぜんぶ話すよ今までのこと うさぎ」（4月23日ー6/19）「水
晶玉に未来尋ねる R」（6/19ー8/21）「恋という熱じわりあがって おはぎ」（8/21ー10/30）「体育館の窓の夕映え ジュン」（10/30ー12/25）「いやですいやだ絶対いやだ ザリ」（12/25-2/26）「ふたりだと胸がつまって苦しいの
みのり」（2/26-4/22）「今ならいいわ誰も見てない 公仁子」（4/22-6/17）「月は涼しく中天にあり 霞」（6/17-8/5）「
父と子の言葉とぎれて蝉の声 麓天」（8/5-9/23）「君が好きだと気づく瞬間 奏」（9/23-11/11）「ツ
リーのてっぺん星が見ている 成富屋」（11/11-12/30）「いつのまに雪はしずかに降りはじめ あづさ」（12/30-2/25）「
さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉」（2/25-4/21）2005
魔法使いが杖をひと振り ひわ(4/21-
6/2) アスファルトをうつ大粒の雨 聖子(6/2-
7/20)さあ今日も長い道のり一歩ずつ とろっぺ(7/20)
呼び出し音に胸が高鳴る 翠(9/15-11/3)金色の落ち葉かさこそ吹かれてく 洋(11/10-12/22)大根も煮えおでんふつふつ 健(12/22-2/23)愛してるって言ってちょうだい
藍(2/23-4/13)泣きながら一人生まれてきたんだよ かよねこ(4/13-6/1)ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月(6/8-7/20)今日をひたすら鳴いている蝉 京(7/27-9/7)思いがけない好きのスタート さくら(9/14-11/2)足がもつれてもう踊れない 風(11/9-12/21)めでたさも中位なりおらが春 一茶(12/28-2/15)風に吹かれて胸がいっぱい 珠(2/22-4/5)まいどのことでおせわさまです たつみ(4/5-5/24)