「矢崎藍の付けてみませんか」コラム 東京新聞（火）朝刊・中日新聞（木）朝刊掲載です
中日新聞で１９９０年から始まった付け句コラムです。募集コラムのあと、読者の付け句を紹介します。基本的にコラムですので、入選順位、賞のようなものはありません。付け句は活字メディアでの募集ですのではがきでご参加ください。２００１年１０月から、東京新聞にも掲載。応募者は中部地方と首都圏に広がって、ちょっと激戦。皆さんがんばってね！
◆過去のコラム1999年−2001年◆このコラムのそもそも
前句 いやですいやだ絶対いやだ ザリ
| 「募集」 東京2月24日（火）中日26日（木） |
| （いやですいやだ絶対いやだ ザリ） 吉野家のメニューを変えるBSE 小川昭三 病院の窓より見ゆる村の墓地 奥村榮一 爆煙の下で素足がボール蹴る 伊藤千敏 九条をたたいてこねて切り刻む 長澄子 いまの戦争、将来の戦争への不安が目立った今回でした。ところで次の謎々句、解けますか。 吉野川迷い込んだるここはどこ？ 旦喜 四国の吉野川をさかのぼりたどりつくのは祖谷。安徳天皇が壇ノ浦から逃げたという伝説の地です。答は「祖谷です祖谷だ絶対祖谷だ」なーるほど。 さて、お待ちかね次回の宿題ですよー！ ふたりだと胸がつまって苦しいの みのり 久し振りに五七五の前句です。この句に七七句を付けてください。 (ふたりだと胸がつまって苦しいの) チョコのリボンを君の手が解く りえ ふたりの関係は恋人か。それとも？ 場所は？ どうぞ想像をたくましく。あ、もちろんご経験でも。発表が三、四月なので春の風景もどうぞ。 （ふたりだと胸がつまって苦しいの） 桃の花かげ夕月が出て 藍 ふふ、ただじゃすまない。時事句にもご挑戦を。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、紙上匿名（ペンネーム）の方は本名も明記。句数制限なし。３月５日（金）までにご投かんを。七七句ですよー。 （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「ヒト以外」 東京2月17日（火）中日19日（木） |
| （いやですいやだ絶対いやだ ザリ） 春なのにため息一つまた一つ 河田せき子 父親に彼氏紹介させられる 草野まり恵 ほんとに。大騒ぎなんだから。 （いやですいやだ絶対いやだ） お気楽な息子は今年留年か 花島峰子 「不自由だ早く来てくれ淋しいよ」 山田房子 天の声。え、そっちで専業主婦？ ダーメ。 （いやですいやだ絶対いやだ） 病院で赤子に返る紙オムツ あきこ 「看護士不足でーー仕方ない」――それが医療か！ （いやですいやだ絶対いやだ） 自然道自然壊して造成中 香 過疎化して熊や狸の押し寄せる 青木房枝 「長野の実家の前を鹿が駆け降りて行ったり、猪が出てきたり、こわいくらいです」と青木さん。 （いやですいやだ絶対いやだ） 川魚の恋路さえぎるダムや堰 ことぶきん シャチだって家族いる海帰りたい 樋田和子 水族館でヒトに愛されてもなあ。 （いやですいやだ絶対いやだ） さあ叫べ絶叫マシン思い切り 伊藤紘美 核ボタンブッシュ金さん押しまくる 木蓮ちゃん ゲ、ゲームですよね、これ。 （いやですいやだ絶対いやだ） あの世から眺めた地球青くない 富子 ヒト以外住めない星は淋しくて 草笛奏 （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「冬椿」 東京2月10日（火）中日12日（木） |
| （いやですいやだ絶対いやだ ザリ） やめないモン！夜のオムツと指しゃぶり カオリン 母を呼ぶ声響いてる園の朝 田中里香 母親業は山また山。でもそれが母さん。フレー！ （いやですいやだ絶対いやだ） 数十年尽した会社に今日フラれ 鮎川理恵 辞めろとは無礼千万控えおろう 古事郎 （いやですいやだ絶対いやだ） 徹夜あけたまる仕事に春うらら 暁 残業も休日勤もサービスで あんでん 企業の人減らし。残った人の超多忙。 （いやですいやだ絶対いやだ） イケメンのお医者の前で胸あらわ ひとみ へへ、実は自信たっぷりだったりして。 試着室白髪も皺も正直に 佐藤澄子 （いやですいやだ絶対いやだ） 枯れ葉ふみ息子に会いに丘の上 さち子 「9月に息子を亡くしました。三ヶ月の闘病のはて。 信じがたい気持ちで在ります。３５歳でした」 冬椿一輪さして喪に服す 塚本益美 辛さに耐える人はあちこちにひっそりいます。 手の中に掬いこぼれる砂の粒 紅 （いやですいやだ絶対いやだ） 銃口を民に向けるな派遣隊 斉藤房道 危険とプレッシャーのもとに、銃をもって行かせてしまった。 九条を無視したのかよ総理殿 さつまいも （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「スペアキー」 東京2月3日（火）中日5日（木） |
| （いやですいやだ絶対いやだ ザリ） ピーマンを食べろと言われ逃げる口 囲梨恵 どうせならきれいにとってね胃カメラさん あおい （いやですいやだ絶対いやだ） スペアキー笑って君に返すけど 藤原真由美 ふと、胸がつまる。 （いやですいやだ絶対いやだ） 別れたいっ？これっぽっちの慰謝料でーっ せみ丸 父さんと別れないでねお母さん 宇津野甫子 離婚率じりり上昇。別れに耐える家族。子どもたちを ケアする態勢作りに税金を使いたいですよね。 （いやですいやだ絶対いやだ） 同居やて？新人類科の嫁が来て 「ま」 嫁じゃダメ娘でなけりゃという姑 尽くしこ 「三十年間耐えに耐え抜いた結果、こんな付け句が できました。紙上匿名希望なりーーィ」 （いやですいやだ絶対いやだ） 曇ってた鏡みがいてしまった日 タヌ公 ありゃ。何を見たの？ 可愛いと言われた笑くぼいまやシワ てら 思い出せ何しに来たの二階まで 石井りえ （いやですいやだ絶対いやだ） 自販機の下へ転がる５００円 縄倉かよ子 １００円と５００円は違うのだ！ （いやですいやだ絶対いやだ） 俺行くよイラク特派が決まったよ 風歩 九条があるから入った自衛隊 松本太一 （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「妻茶髪」 東京1月27日（火）中日29日（木） |
| （いやですいやだ絶対いやだ ザリ） 会いたくて一週間も待てないの すじ 初デートさよならの手が放せない 佐和子 はあーーため息の出る恋人たち。 （いやですいやだ絶対いやだ） ケイタイで出会いをさがすお父さん 自然派素材 コラ、コラ！ （いやですいやだ絶対いやだ） お年玉来年までよと親が言う ありんこ お年玉もう今年からもらえない ひなた お年玉の嘆き句多数。少し前は成人式までもらえたようですが、 最近は高校卒業まで、大学入学したらストップのよう。 ヤー、自立おめでとう。 （いやですいやだ絶対いやだ） 休日はコタツの中でトド２匹 樹 妻茶髪息子金髪俺白髪 秋山末雄 ふと気が付いたんだ。 十年目夫はおならで返事する たかこ 器用といえば器用だけど。 （いやですいやだ絶対いやだ） 墓石のパンフレットを見てる君 由美江 夫婦に流れた歳月。永遠ではない。 （いやですいやだ絶対いやだ） この大蛇触ってごらん馴れてるよ 仲川昌一 （いやですいやだ絶対いやだ） まず金をそしてブーツをその次は（？） 武 なんのためなにとたたかう戦士達 木村美代 （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「年金に」 東京1月20日（火）中日22日（木） |
| （いやですいやだ絶対いやだ ザリ） 正月で棚上げにするダイエット ボート ご馳走、たくさん食べちゃいましたか。 風呂あがりそうーと足のせ体重計 トモちゃん エプロンを化粧まわしという亭主 なずな主婦 くくく。キッチンが目に浮かびます。 （いやですいやだ絶対いやだ） おじイさんイ抜きで呼んでくださいな 心太 おばあさんて呼ばないでまだ八十よ ぷちとまと まだ、この色艶。平均寿命にならないのよ。 （いやですいやだ絶対いやだ） 抜きますよ麻酔無いけど我慢して ポチ？ あれええええ。 （いやですいやだ絶対いやだ） 追い抜かれアテネ出場断念し 武藤美恵子 木曜日またも付け句に落っこちて 山田登志 もー、こんなとこまで競争激烈！ （いやですいやだ絶対いやだ） 年金に霞がかかる初日の出 ピース善子 あなたも見ましたかーー。 （いやですいやだ絶対いやだ） 残り火を煽ったままで去った君 八木一清 ウインクを返してくれた別の人 岩崎尚子 別のヒトじゃだめかなあ。 （いやですいやだ絶対いやだ） 言い切ってしまえばなかったイラク行き 木村れいみ 言い切るチャンスはまだあるはず。諦めない。 （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「寮の柵」 東京1月13日（火）中日15日（木） |
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（いやですいやだ絶対いやだ ザリ） お年玉母が回収手取りなし セトリン 「いや〜、母が、子供に大金はいらないって毎年徴収 されて」結婚資金として強制貯金ですって。「でも、私も 親になったらそうします」母子立派！ （いやですいやだ絶対いやだ） スッピンの時に突然来るアイツ 泰子 そういえば、素顔で眉を描いてないと顔がちがっちゃう ことが多いんですよね。でも、彼の意見は？ あの人が化粧で変わる道すがら ロボコン 化けないでー！ 止まれー！ （いやですいやだ絶対いやだ） 股ひろげケバイ化粧でメール打ち マーピー 世の変転。こんな姿も見慣れてきてしまった。 （いやですいやだ絶対いやだ） ヒゲ面の口あけ写真出すなんて 布施院 わ。これは一か月前、世界に衝撃を与えた写真。しかし 今回、さすがに時事句がいっぱいです。 （いやですいやだ絶対いやだ） テボドンを夢中でつかまえ目が覚めた 神谷昌子 昌子さん、抑えてくれてありがとう。 初夢や吾子に徴兵検査来る 村井由郎 憲法が変えられればじわじわと、子に、いまあんよして る孫たちに、その日が来るかもしれません。 （いやですいやだ絶対いやだ） 赤紙を神棚に上げ叫んだ夜 山楽 寮の柵越えて防空壕に逃げ 久世武治 （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「しめきりですよ」 東京1月6日（火）中日8日（木） |
| 明けましておめでとうございます。お正月休みの 付け句は出されましたか。――なんて私はこの原稿、 年末に書いています。１週間さきの掲載原稿を送る のは物書き業の常ですが、何しろこのの暮れは、 戦争をしてはならないこの国の自衛隊が、戦場に なりかねないところに派遣され始めたのです。十日さき の世界に平和なお正月を祈らざるをえません。 （いやですいやだ絶対いやだ ザリ） 心だけ君に残して戦場へ 太陽の東月の西 こんな駄々こねたことなし年の暮 宮脇正仁 こんなにみんなで発言しても、政治が動かない。 （いやですいやだ絶対いやだ ） オレオレと赤字国債しゃしゃり出る みの虫アッパ 借金は国民が背負う。赤字にしたのは誰か。丸投げ をいつまで続けるのか。――さて可愛い句も到着。 （いやですいやだ絶対いやだ ） パパにチューする児にいつか恋人が 神谷小百合 花束を渡されほほ笑む胸のうち ヨブリン ヨブリンさん「十二月六日娘が結婚しました。大の お父さんっ子でした」花嫁の父の胸の複雑。 （いやですいやだ絶対いやだ ） 飼い主と揃いの服を着せられる どぶきん 皆さんもどうぞ。付け句ははがきで〒460-8511中日 新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番 号、紙上匿名（ペンネーム）の方は本名も明記。句数 の制限はありません。１月９日（金）までにご投かんを。 五七五句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
| 「募集 いやです」 東京12月23日（火）中日25日（木） |
| （体育館の窓の夕映え ジュン） 汗のまま走って来たね橋のそば 山谷武史 農作業終えて河原で足洗う 斉藤房道 赤トンボ妖精乗せて翔び交って ぐりこ おともだちでいてくださいと微笑まれ さゆたえこ みいつけた夢みる頃のわすれもの あおい 懐かしい句、若いドキドキの句など多数ありがとうございました。載らなかった方はつぎをがんばってくださいね。さて、今度はちょっと趣向をかえて。 いやですいやだ絶対いやだ ザリ うふ。こんな七七句がありました。この句に、五七五句を付けてください。まずは自分の思いや経験の実感で。家庭内、学校、会社ネタなどどうぞ。でも、想像で遊んでもいいんですよ。 （いやですいやだ絶対いやだ） 愛してる妻に密告されたとは 臥院 と誰か他人様になってみたり。時事句はいろいろ考えられそうですね。爆笑句も期待してます。 （いやですいやだ絶対いやだ） 静けさの中で遠のく終電車 ふさ子 こんな叙情的な場面でドラマを作ることもできます。恋の句もぜひ。あ、人だけでなく、動物や自然の思いを汲む句もいいかも。付け句ははがきで〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。住所と電話番号、紙上匿名（ペンネーム）の方は本名も明記。句数の制限はありません。１月９日（金）までにご投かんを。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大学教授） |
◆「矢崎藍の付けてみませんかコラムのそもそも」
このユニークなる（伝統と現代の衝突じゃぞ！）中日新聞の付け句コラムは１９９０年にはじまっています。最初は朝刊の「辛口診断」という時評コラムの中でした。矢崎藍担当コラムで、ある日、付け句の話題を紹介して、「あなたも付けてみませんか」と、（いわば言葉の綾で）文章をしめたところ、読者から付け句がきたのです！ 掲載するとまたきた！ やっほっほ、どーしよー！ とうれしい悲鳴が続いて、とうとう「募集、しめきり、発表」という形をとるようになりました。ちなみに最初の記念すべき前句と付け句は
恋なんてどうでもいいと古稀は言い 敏女
それでも赤い薔薇が好きなの、 しげる
でした。くわしくは『連句恋々』（筑摩書房）に書いてあります。
1996年に「矢崎藍の付けてみませんか」として独立、日曜日の読者総合特集ページへ。
1998年に（金）夕刊に引っ越し、文化欄「矢崎藍付けてみませんか」
2001年10月から東京新聞にも同時掲載となり、
2003年6月から朝刊掲載となり現在に至っています。
募集１０日後しめきりがふつうで、５、６回のコラムの中で発表となります。「今を、共に、語る！」という対話的付け句コラムの内容は終始変わっていません。
『平成付け句交差点』（筑摩書房）はこの欄の精選付け句集です
◆過去のコラム１９９９−「あと一年で二千年なり」（１／８−２／１２） 「働きすぎてちょっと疲れて」（２／２６−４／９）「不覚にもまた恋をしそうな」（４／１６−６／４）「むくむくと入道雲が立ち上がり」（６／１１−８／６）「電子レンジがチンと鳴る夜」（８／１３−９／２４）「急がないのがうちのモットー」（１０／１−１１／５）「濃すぎるかしらけさの口紅｝（１１／１９−１２／２４）◆２０００「 朝の光が透けるカー テン」（１／７−２／１８）「不況にもめげぬ男はつらいこと」（ ２／２５−４／１４）「あなたを見てたずっと前から」（４／２１−６／９）「ぼんやり見てる窓越しの雨」（６／１６−７／２８）「氷カランと麦茶の香り」（８／４−９／２２）「ふと目が合った恋のはじまり」（９／２９−１１／１０）「信号がもうすぐ赤に変わります」（１１／１７−１２／２２）◆２００１「２００１年元旦の膳」（１／５−２／９）「振り返ったら妻がにっこり」（ ２／１６−３／３０）「あなたが好きよ規格はずれで」（４／６−５／１８）「土曜二時半雑踏の中」（５／２５−７／６）「誰にも内緒そっと寄り道」（７／１３−９／７）「あなたにひとつ言いたいことが」（9/7-10/26）「秋深き隣は何をする人ぞ」（10/26-12/21）「ざぶりとつかる湯はあふれ出て」（１２／２８−２／８）「おおきくひとつ息をしてみる」（ ２／１５−４／１２） 「さわさわとふたりの中を過ぎる風」（4/19-6/14）「母さんに会ったら涙こぼれそう」(6月21日-8 月6日)「命あふれて好きな日盛り」（8/2-9/27）「横顔の君にきょうこそプロポーズ ななしげ」(10/8-12/18)「恋情のただやるせなき雪ぐもり 聖子」(12月25日-2/25)「いち、にっ、さんしとつづく人生 おはぎ」（2/26日ー4月23日）「ぜんぶ話すよ今までのこと うさぎ」（4月23日ー6/19）「水晶玉に未来尋ねる R」（6/19ー8/21）「恋という熱じわりあがって おはぎ」（8/21ー10/30）「体育館の窓の夕映え ジュン」（10/30ー12/25）