中日新聞矢崎藍の「付けてみませんか」「矢崎藍の付けてみませんか」コラム 中日新聞（月）朝刊掲載です
中日新聞で１９９０年から始まった付け句コラムです。募集コラムのあと、読者の付け句を紹介します。基本的にコラムですので、入選順位、賞のようなものはありません。付け句は活字メディアでの募集ですのではがきでご参加ください。（２００１年１０月から2008年3月まで、東京新聞にも掲載。）
◆過去のコラム1999年−2005年◆このコラムのそもそも
前句
今こそチャンス君に告白 ミルキー
| 「募集」中日新聞11月3日（月） 募集 |
| （今こそチャンス君に告白 ミルキー） ああフェルゼンわたくしホントは女です みゆき 実は俺ジェダイの弟子をやっている ユウト （今こそチャンス君に告白） あの花火ハート型のはオレ注文 ミルキー２号 鍋奉行少しは好きに食べさせて ポニョ 多数ご応募多謝。今回は全国高校付け句コンクール（桜花学園大学・豊田市主催）一万余句もくわわり、にぎやかな世代交流でした。 さてお待ちかね、つぎの宿題ですよー。 人生という遠い道のり ひわ この七七句に五七五句を付けてくださいな。この道あなたはどこまできましたか。 （人生という遠い道のり） 初孫の高い鼻筋俺に似て Ｓ＆Ａ それぞれの世代の、あの日の思いをどうぞ。 （人生という遠い道のり） こつこつと燃えないゴミを分別し 藍 日々生きてるささやかな暮らしも句にしてみてください。もちろん経験でなく想像でｏｋ。恋句も考えて。発表は十二月にかかりますので冬の風景句もどうぞ。混迷の世の時事句も。爆笑句も。 付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネーム（なるべく５字以内で）の方も本名を必ず書いて。十一月十九日(水）までにご投かんを。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
| 「邪魔するな」中日新聞10月27日（月） 第5回 |
| （今こそチャンス君に告白 ミルキー） 二人きり階下に向かうエレベーター 若紫 手が触れて脈あり脈なし期待して ゆず とっくとっく。自分の脈のほうが速くなる。 （今こそチャンス君に告白） 欠勤を気遣う電話に胸キュンと としこ 離婚して帰って来たという噂 嘉男 （今こそチャンス君に告白） プロポーズ頷くだけの歯科治療 小島武 むむーもいわせず。 （今こそチャンス君に告白） タンザニア前世の記憶よみがえる おじじじ 前世ふたりはシマウマ夫婦で草原を駆けてたんですって。え、鰐夫婦だった？ （今こそチャンス君に告白） 顔のしみ目尻のしわも何のその 宮下捷子 濡落葉枯葉誘って旅行かむ 遠江坊 あ、紅葉マーク義務化ですよ。年齢という個人情報を公表し街を走る憤りの声まだふつふつ。 邪魔するなまごも子供もわが恋を くの一 （今こそチャンス君に告白） 民意無し世襲総理によりかかり 山本尚子 待ってたよイスとりゲーム僕の番 佳代 「きっと水面下で順番が決まってる椅子がある世の中。国民の意思なんてどこにあるのでしょう」 （今こそチャンス君に告白） 夕暮れの海を背中にダイビング えんがわ （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
| 「すみません」中日新聞10月20日（月） 第4回 |
| （今こそチャンス君に告白 ミルキー） 垣根越し隣の柿のおいしさよ 飴子 へっへ、実りの秋。 （今こそチャンス君に告白） 実は俺猫より犬が好きなんだ フランチュー 猫派の彼女の目が、冷たくなりませんように。 バリバリの名古屋生まれの巨人ファン 塚本勇平 ハハ、意外といるんです、これ。 （今こそチャンス君に告白） 実は我がナイスバディーは偽装です 香珠 ごめんなさい干支ひとまわりごまかして ひかる （今こそチャンス君に告白） バツイチで子供もいます老親も ハイジ アルバイト派遣以外に職はなし 野菊の母 だからこそ、いっしょに生きる相棒がほしいんですよね。家族が各地に散開。若者の孤独のおもいが今、たくさんゆれているこの国。 （今こそチャンス君に告白） お母さん今日から名字変わるから o ほんとはね父は生きてる二丁目で ちくわくち ドラマか現実か？ （今こそチャンス君に告白） すみません核開発をしてました ジョン・ドウ 「すみませんどっさり持ってる核兵器」と大国に謝ってほしいなあ。 （今こそチャンス君に告白） 遠花火身をゆだねればもう一度 加藤晃弘 （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
| 「ミュージカル」中日新聞10月13日（月） 第3回 |
| （今こそチャンス君に告白 ミルキー） 美しいえりあしハチがとまってる 毒が好き 葡萄園陽差しをよけて見つめ合う 池戸芳枝 色づいてまぶしい秋がきましたね。 （今こそチャンス君に告白） 目が合うと私の体内ミュージカル C.H. 連絡網僕にとってはLove call. 向日葵 若々しいですね。高校生さんの句です。 （今こそチャンス君に告白） ごめんなさいほんとは追試もおちていた しおり 引出しに溜まるテストとウソの数 マレーシアン 親の顔うかがうー。 （今こそチャンス君に告白） 皇居前安保反対デモの中 好奇心 こちらは四十年前の青春。学生たちが熱かったころですよ。 下駄箱の手紙の主はホント僕 元廣 （今こそチャンス君に告白） 第九条捨てたら行くの僕等です 松葉口将也 ああ、僕等からの声 ところで例年の付け句、連句の祭「とよたキャンパス連句まつり」(愛知県豊田市他主催)は、十月二十五日(土) 11時―16時。翌日は１４時まで。桜花学園大学で。（0565-35-3131）。このコラム付け句および全国高校付け句コンクールも発表。尻取り連句などもあります。当日は学園祭なので屋台のお団子でも食べて付け句遊びにどうぞ。 (やざきあい 作家･桜花学園大学客員教授) |
| 「俺の遺伝子」中日新聞10月6日（月） 第2回 |
| （今こそチャンス君に告白 ミルキー） 私たち静かに静かに手をつなぐ ミッキー 帰り道ふたつのかげと赤とんぼ 佐伯光 彼岸花も咲きましたねえ。 （今こそチャンス君に告白） プロポーズ目鼻整形言うべきか めぐ 飯抜いてメタボの腹を凹ませて 洒落八 悩み、がんばってる人たちもいますよ。 （今こそチャンス君に告白） このオレが一生かけて守ったる Ｍ 高貴な約束。 世のために俺の遺伝子残すべき 近藤富子 わー。雄の本音じゃ。 （今こそチャンス君に告白） 愛してるなんちゃって俺目が覚めた 心太 ハハ。恋の夢、夢、タダで見て幸せ。生きてるかぎりまた見ましょ。あ、この付け句を出したはがき代５０円！ 残り年賀状ならタダでーす。 （今こそチャンス君に告白） 開会式花火にCG使ったよ ナメクジ 中国制作のこれも巨大な幻でしたっけ。 （今こそチャンス君に告白） 猿酒に酔い痴れていた八年間 恵紅 「どこかの大統領」と。あの国の経済が倒れると世界も倒れる。警告はずっと発せられていたのだけれどついにここまで。 （今こそチャンス君に告白） マティーニのオリーブつまむ白き指 岩津志乃ぶ （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
| 「観覧車」中日新聞9月29日（月） 第1回 |
| （今こそチャンス君に告白 ミルキー） 小雨降るバス停今日は二人きり 神谷昌子 雨が降るたびにしみじみと秋ですね。 （今こそチャンス君に告白） すれ違いふたり同時に振り返り 一子 占いも相性おみくじすべてよし かなえ これは運命！ 信号が三つ続いて青だった 歌詠鯨 もう行くっきゃない。 （今こそチャンス君に告白） ピクリとも動かぬウキを見つめてる 伊藤千敏 緊張しますねえ。この恋釣れるか。 （今こそチャンス君に告白） 観覧車天空めざし動きだす 紅 きっと大団円。がんばれえ。 ―さて、時事句もずいぶん飛来中です。 （今こそチャンス君に告白） 米騒ぎもしやあなたのお口にも 久美 お値打ちと悪魔がそっと耳元で みの虫アッパ 超複雑化していた流通機構にも驚いた私たち。お値打ち悪魔はそこらじゅうにいるぞ。 （今こそチャンス君に告白） あなたとは違うんですと初主張 泰枝 客観視できると言ってアイムソーリー ゴロー 国ではなく党の戦略―いえ、あがきか。 その次は私が狙う総理の座 喜久男 今度こそ国民が客観的に判断したい。 （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
| 「しめきりですよ」中日新聞9月22日（月） |
| （今こそチャンス君に告白 ミルキー） 風に舞うしろい帽子をつかまえた 凪砂 宿題の付け句はもう出されましたか。 （今こそチャンス君に告白） どう見てもオレって奴は男前 あおぢる ぷっ。今回は高校生さんも各教室から参加。 （今こそチャンス君に告白） 国民の支持率悪化今日辞める 名無し てのもありますよ。そうそう、ユニークな本が出ました。全国の現代連句作品の中から「恋・月・花」の三テーマの付け句（五七五句も七七句も）を、抜いて集めたんです。作者350人の自薦計三千句。ぱらっとあけると恋句があってにやり。 キスひとつふたつめからはあの部屋で 小町 涼しい夜はベッドきしませ 藍 俳句や川柳と似ていながら、物語性がある。やや柔らかく軽いのは、やはり誰かの句に付けたか ３２ら。交流が生んだ句なんですね。このコラムから連句にはいったかたも登場してますよ。楽しみながら付け句作りのご参考に。ついでに連句もいかが。『平成連句抄 月と花と恋と』（三省堂）十七季編集部・編（1600円＋税）です さて、宿題付け句は〒460-8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネーム（なるべく５字以内で）の方も本名を必ず書いて。九月二十四日（水）までにご投かんを。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
| 「募集」中日新聞9月15日（月） 募集 |
| （あつしあつしと門々の声 芭蕉） 老親の寝息気にする熱帯夜 ウッチー 猛暑のあとは豪雨と、思いがけぬ夏の終わり。 値上がりに節約倹約音を上げて 旦喜 干からびた体から取る保険料 本多雅子 恨みの時事句、先回につづき多数でした。 いっこうになくならないぞ天下り 千秋 そこはかと秋風立ちぬ内閣府 なずな主婦 ここでうちどめにしようと思ったら、おやまあ トップの辞任じゃ。そういえば芭蕉七部集の『炭俵』には、「どたりと塀のころぶ秋風」という孤屋さんの句がありましたっけ。 さて、つぎの宿題です。 今こそチャンス君に告白 ミルキー この七七句に五七五句を付けてくださいな。 （今こそチャンス君に告白） 握った手ぐっと力をいれまして 颯 ご自分のあの日を思い出したり。場所、相手など、情景を自由に想像(妄想？)してください。 （今こそチャンス君に告白） 白熊くんごめん氷はまだ溶ける アトム 時事句、大笑い歓迎。発表は十月になりますから、秋の風景句もお願いしますね。 付け句は〒460-8 511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。句数制限なし。住所、電話番号、ペンネーム（なるべく５字以内で）の方も本名を必ず書いて。九月二十四日（水）までにご投かんを。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家・桜花学園大学客員教授） |
◆「矢崎藍の付けてみませんかコラムのそもそも」
このユニークなる（伝統と現代の衝突じゃぞ！）中日新聞の付け句コラムは１９９０年にはじまっています。最初は朝刊の「辛口診断」という時評コラムの中でした。矢崎藍担当コラムで、ある日、付け句の話題を紹介して、「あなたも付けてみませんか」と、（いわば言葉の綾で）文章をしめたところ、読者から付け句がきたのです！ 掲載するとまたきた！ やっほっほ、どーしよー！ とうれしい悲鳴が続いて、とうとう「募集、しめきり、発表」という形をとるようになりました。ちなみに最初の記念すべき前句と付け句は
恋なんてどうでもいいと古稀は言い 敏女
それでも赤い薔薇が好きなの、 しげる
でした。くわしくは『連句恋々』（筑摩書房）に書いてあります。
1996年に「矢崎藍の付けてみませんか」として独立、日曜日の読者総合特集ページへ。
1998年に（金）夕刊に引っ越し、文化欄「矢崎藍付けてみませんか」
2003年6月から朝刊掲載となり現在に至っています。
（2001年10月から2008年3月まで東京新聞にも同時掲載。）
募集１０日後しめきりがふつうで、５、６回のコラムの中で発表となります。「今を、共に、語る！」という対話的付け句コラムの内容は終始変わっていません。
『平成付け句交差点』（筑摩書房）、『付け句恋々』（中日新聞社）はこの欄の精選付け句集です
◆過去のコラム１９９９−「あと一年で二千年なり」（１／８−２／１２）
「働きすぎてちょっと疲れて」（２／２６−４／９）「不覚にもまた恋をしそうな」（４／１６−６／４）「むくむくと入道雲が立ち上がり」（６／１１−８／６）「電子レンジがチンと鳴る夜」（８／１３−９／２４）「急がないのがうちのモットー」（１０／１−１１／５）「濃すぎるかしらけさの口紅｝（１１／１９−１２／２４）◆２０００「
朝の光が透けるカー テン」（１／７−２／１８）「不況にもめげぬ男はつらいこと」（
２／２５−４／１４）「あなたを見てたずっと前から」（４／２１−６／９）「ぼんやり見てる窓越しの雨」（６／１６−７／２８）「氷カランと麦茶の香り」（８／４−９／２２）「ふと目が合った恋のはじまり」（９／２９−１１／１０）「信号がもうすぐ赤に変わります」（１１／１７−１２／２２）◆２００１「２００１年元旦の膳」（１／５−２／９）「振り返ったら妻がにっこり」（
２／１６−３／３０）「あなたが好きよ規格はずれで」（４／６−５／１８）「土曜二時半雑踏の中」（５／２５−７／６）「誰にも内緒そっと寄り道」（７／１３−９／７）「あなたにひとつ言いたいことが」（9/7-10/26）「秋深き隣は何をする人ぞ」（10/26-12/21）「ざぶりとつかる湯はあふれ出て」（１２／２８−２／８）「おおきくひとつ息をしてみる」（
２／１５−４／１２） 「さわさわとふたりの中を過ぎる風」（4/19-6/14）「母さんに会ったら涙こぼれそう」(6月21日-8
月6日)「命あふれて好きな日盛り」（8/2-9/27）「横顔の君にきょうこそプロポーズ ななしげ」(10/8-12/18)「恋情のただやるせなき雪ぐもり 聖子」(12月25日-2/25)「いち、にっ、さんしとつづく人生 おはぎ」（2/26日ー4月23日）「ぜんぶ話すよ今までのこと うさぎ」（4月23日ー6/19）「水
晶玉に未来尋ねる R」（6/19ー8/21）「恋という熱じわりあがって おはぎ」（8/21ー10/30）「体育館の窓の夕映え ジュン」（10/30ー12/25）「いやですいやだ絶対いやだ ザリ」（12/25-2/26）「ふたりだと胸がつまって苦しいの
みのり」（2/26-4/22）「今ならいいわ誰も見てない 公仁子」（4/22-6/17）「月は涼しく中天にあり 霞」（6/17-8/5）「
父と子の言葉とぎれて蝉の声 麓天」（8/5-9/23）「君が好きだと気づく瞬間 奏」（9/23-11/11）「ツ
リーのてっぺん星が見ている 成富屋」（11/11-12/30）「いつのまに雪はしずかに降りはじめ あづさ」（12/30-2/25）「
さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉」（2/25-4/21）2005
魔法使いが杖をひと振り ひわ(4/21-
6/2) アスファルトをうつ大粒の雨 聖子(6/2-
7/20)さあ今日も長い道のり一歩ずつ とろっぺ(7/20)
呼び出し音に胸が高鳴る 翠(9/15-11/3)金色の落ち葉かさこそ吹かれてく 洋(11/10-12/22)大根も煮えおでんふつふつ 健(12/22-2/23)愛してるって言ってちょうだい
藍(2/23-4/13)泣きながら一人生まれてきたんだよ かよねこ(4/13-6/1)ちょっと待ってと呼びとめる声 蘭月(6/8-7/20)今日をひたすら鳴いている蝉 京(7/27-9/7)思いがけない好きのスタート さくら(9/14-11/2)足がもつれてもう踊れない 風(11/9-12/21)めでたさも中位なりおらが春 一茶(12/28-2/15)風に吹かれて胸がいっぱい 珠(2/22-4/5)まいどのことでおせわさまです たつみ(4/5-5/24)恋とは不意にやってくるもの
卓(5/24-7/19)市中は物のにほひや夏の月 凡兆(7/26-9/6)ばったり会った人ごみのなか めじろ(9/13-11/1)いざいざと冬将軍を迎えうつ 葵(11/8-12/22)時間よ止まれいまこの場所で のら(12/29-2/14)ものおもひけふは忘rれて休む日に 野水(2/21-4/7)おっとっとっとビールこぼれる 拓(4/14-6/2)星空見上げ話すケータイ 圭(6/2-8/4))あつしあつしと門々の声 芭蕉（8/4−9/15）