「矢崎藍の付けてみませんか」コラムーーは中日新聞（金）夕刊掲載です
可能な地域のかたはーですが）ぜひ金曜夕刊を読んでくださいね！
中日新聞ではもう9年も読者と矢崎藍との付け句遊びが続いています。募集コラムのあと、付け句を紹介しながら今の世の中のことをおしゃべりしています。基本的にコラムですので、入選順位、賞のようなものはありません。。付け句は現時点では活字メディアでの募集ですのではがきでご参加ください。（これまでにも、なぜか大阪、神戸、埼玉などから常連さんの付け句はがきをいただいています）
◆１９９９の付け句と発表「あと一年で二千年なり」（１／８−２／１２）
「働きすぎてちょっと疲れて」（２／２６−４／９）「不覚にもまた恋をしそうな」（４／１６−６／４）「むくむくと入道雲が立ち上がり」（６／１１−８／６）「電子レンジがチンと鳴る夜」（８／１３−９／２４）「急がないのがうちのモットー」（１０／１−１１／５）
◆今回の前句は「濃すぎるかしらけさの口紅」です！(11/５ 募集 発表１１／１９−１２／２４）
| 『募集』 １２月２４日(金） |
| （濃すぎるかしらけさの口紅 メギ） ガングロと美白が火花散らしてる 福間正治 ダイナミックな化粧のはやる世の中ですが。 不惑には魅惑の色を塗りこんで 岩津志乃ぶ おんさいよ栗きんとんがうまいぜも 古田耕司 栗きんとんは中津川からの誘惑です。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 新入りの机隣を意識して 山路由清 自信ない仕事に加勢してる朱 榊原美由紀 女、働く。こつこつと参りましょ。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 看取りから解放されてバスツアー 甲斐保子 介護問題にも暮れた今年でした。さて、今回もたくさんの付け句多謝。つぎの宿題ですよ。 （朝の光が透けるカーテン じゅん） という七七句に五七五句を付けてみませんか。ついにきた二千年の感慨、お宅のお正月風景は？ （朝の光が透けるカーテン） 父さんがしきる郷里の鰤雑煮 藍 ２０００年婚姻届け出すふたり ときよ 「２０００年」で始まる句もどうぞ。もちろんその他恋句、時事句、大笑い句など、自由に想像してください。はがきで〒４６０―８５１１中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。一月九日（日）までにご投函を。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
| 『三者懇』 １２月１７日（金） |
| （濃すぎるかしらけさの口紅 メギ） 街路樹が一直線に燃えている 静香 女のお出かけ！ さあお言い鏡よ鏡きれいかい？ 徒夢 新しい恋を探しに合コンへ 水谷三和子 （濃すぎるかしらけさの口紅） 参観日きれいできてねお母さん 卓 参観日ちょっと気合が入りすぎ 和美 参観日の句多数でした。学校の門をくぐる親の緊張感は格別。いろいろ気も使うんです。 三者懇茶髪にピアスの息子いて 亜季子 （濃すぎるかしらけさの口紅） ご近所のおしゃべり婆と目が合った かり 何をいわれるやら。 樹々の葉も赤くなるのは落ちるとき まるひ おいしそうぷるんとはじけめんたいこ 辻美名 おしゃべりな大きな口は隠せない 山田敏彦 以上、イヤミ連の皆様でした。 （濃すぎるかしらけさの口紅） クリスマス忘年会と飲み歩き 水仙 「夫病気療養中。二五歳長男、二四歳長女無職。エイヤーッと母ちゃん頑張らなきゃー」 と水仙さん。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 一度だけ歩いてみたいな女装して 洋一 「これはあくまでも付け句の世界です」ハイハイ。 （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
| 『電話番』 １２月１０日（金） |
| （濃すぎるかしらけさの口紅 メギ） 子育てを終えて女を思いだし 明美 ゴンドラの唄口ずさむパート主婦 まりこ 「命短し、恋せよーー」でしたっけね。 パート先きょうはひとりの電話番 平松ふで子 誰にも会わないんだけど。だからこそしゃっきりがんばる女なのだ。 （濃すぎるかしらけさの口紅） リストラの夫を映画に誘い出す 古田順子 亡き夫の友と会うのも久しぶり 田中健 若いころ思いもかけなかった人生の屈折。そこに小さな物語が生まれます。――あ、怖い物語も。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 奪われた恋の決着果たし合い 土方資富 二十年守った妻の座渡せない 惠子 （濃すぎるかしらけさの口紅） 腰痛の指圧に通う並木路 藤城加恵子 「指圧の先生がハンサム」――とはけっこうなこと。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 四十肩頭痛腰痛更年期 久美子 五十才も一度夢を見たくなる 友 還暦を過ぎてますます若くなり 仲川当枝 いるんだよなあ、これが。ほれ、先輩に続け！ 七十才わたくしもまだ女です 小林きね 八十才女忘れぬ心意気 近藤大造 （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
| 『狸でも』 １２月３日（金） |
| （濃すぎるかしらけさの口紅 メギ） 子を預けパパとのデート久しぶり 松山みわ うきうき。 お隣のご主人も行く紅葉狩 としお 同窓会昔の彼に会えるかも 大脇正恵 ラブレターもう時効だわクラス会 加古敬子 今回、同窓会テーマの句、８０数句ありましたよ！ （濃すぎるかしらけさの口紅） ボーナスは今年もないと告げられて 加ッ光 きっ。自分をひきしめようとひく口紅もあります。 あの人の心変わりの予感して ロンサム ショックなどなかったふりで会わなけりゃ さとみ 女という生き物。 （濃すぎるかしらけさの口紅） きょうこそはサヨナラ言おう今の彼 岩崎尚子 モカピンクあいつがキライと言った色 吉田昌子 （濃すぎるかしらけさの口紅） 緊張の靴紐結ぶ初舞台 武藤沙和子 コンクール二分間だけ華となり 和ちゃん 見せる女。 本会議始まる前の化粧室 皺矢小波 大臣のたった一つの椅子に就く 植田喜久男 紅一点指定席がまだ目立つ社会。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 狸でも電車の中では化けません ニャンコ （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
| 『熱視線』 １１月２６日（金） |
| （濃すぎるかしらけさの口紅 メギ） 休日の山茶花の道スキップし 塚本益美 さざんかの垣根まがれば彼の家 ミキ 心がはずんでる冬の朝です。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 異国語のゴミ出し板が揺れている のり子 このごろ国際化した街角。 産休が明けて出社のパンツスーツ 真知 「ひとつサイズ上を買ったんですよー。ショック！」。いえ、女らしさが発散する魅惑の時期ですよ。 （濃すぎるかしらけさの口紅） すれ違いざまに感じた熱視線 讃岐のタヌキ 二千年前に誤作動起こしそう 小川昭三 （濃すぎるかしらけさの口紅） 出勤の夫見送りいそいそと 翠川与三郎 熟女さんたちも魅力全開。 きょうあなた遅くなるわと謎めいて オッカ 二、三日留守のメモ置き家を出る 祝多 不安げに女房目で追う濡れ落ち葉 ひわ で、どちらへ？ 同窓会「変わらないね」と言われたい うみ 家事一切亭主に任せバス旅行 高木清吉 「年に二度わいわいがやがやのバス旅行。妻の化粧も全体に濃いです」 （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
| 『柿鈴生りに』 １１月１９日（金） |
| （濃すぎるかしらけさの口紅 メギ） トーストがかたんとあがるダイニング 圭子 電子音脱水すんでる洗濯機 ほらほら お化粧も大急ぎ。 出勤は夫がさきのエンジン音 ゆずる （濃すぎるかしらけさの口紅） 朝霧が車のライトさえぎって 大畑杉子 山間部雪とラジオの天気予報 田中幸二 急に寒くなりましたね。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 内定の知らせに心躍らせて 浅野寿治 十八年生きて初めて働くの 神谷泰徳 社会に出る。服装も歩き方も神経を使うころ。 若さには素顔にミニがよく似合う 小森富子 そうわかるころは化粧が必要になるんですよね。 （濃すぎるかしらけさの口紅） バックミラーすこしお肌もお疲れに まさちゃん 念入りにクマやカラスも退治して からくれない 目の隈にカラスの足跡。作者は男。憎らしいね！ 三十路です親の意見も聞きますよ 田渕義明 ところが親も言わなくなる。それが自立。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 降り立ちしふるさとの駅山迫る 美恵 「さびれた駅前は昔のまま。でも私は変わりました」 里山の柿鈴生りに墓参り 山内鐐造 （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
| 『しめきりですよ！』 １１月１２日（金） |
| （濃すぎるかしらけさの口紅 メギ） お見合いもベテランとなる秋の雲 蕗 もう宿題付け句はできましたか。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 娘の目かなり気になる午前様 小町 ふふふ。いろんなドラマを想像してくださいね。在カリフォルニアの小町さんにはインターネットで付けてもらいました。情報社会はたしかに日々進化しています。インターネットを見て九州からこの新聞付け句にハガキを下さるかたもあります。 先日、古典の授業の中で紫式部と夫の宣孝の歌での言い争いをとりあげたところ、学生が「歌のやりとりで会話するなんて、私たちがメールで通信し合うのと似ていて、身近に感じた」というので、びっくりしました。ここでいうメールは、例の携帯電話（ケータイと書かないとぴんとこなくなりましたね）で書き込むメッセージです。「仲のいい友だちと５７５句と７７句で付けたり、短歌を書き込んだりしてますよー！」と。日常語でも５７５，７７にすると、ちょっと集中度が高くなる。なぜか口では言えないことがこの短い文字でなら言える。推敲もしたくなる。――詩と日常語の接点である俳諧（連句）は「俗語を正す」ともいわれてきたのでしたっけ。さて、（濃すぎるかしらけさの口紅）への付け句投函しめきりは十四日（日）。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
| 『募集』 １１月５日（金） |
| （急がないのがうちのモットー 麦） あと五分トイレに行って化粧して 安永あつ子 あわてない彼は待ってるいつまでも 小林秀香 はっは。大丈夫ですかー。 ご飯まだ？レシピの通りやってるの 右京清子 ご愛敬ですむこともあり、すまぬことも。 （急がないのがうちのモットー） 判決は事件の記憶消えてから としお もちろん当事者には消えぬ年月。 三党の嫌な宿題先送り 小林喜代春 いいかげんにしてくれー！ 長生きが孫子のために良いことか 土方資富 先送りその場凌ぎで五十年 福間正治 いろいろ考えた今回でした。さて次回の募集を。 濃すぎるかしらけさの口紅 メギ この七七句に五七五句を付けてくださいな。 （濃すぎるかしらけさの口紅） 木枯しの町に職場をまたかえて 藍 急に寒くなりましたね。ご自分のすむ町、村の冬の風景もいれてみてくださいな。二句で小説 の一場面を作るつもりで、自由にご想像を。 付け句ははがきで〒４６０―８５１１中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。十一月十四日 までにご投函を。紙上ペンネームOKですが、本名とご住所も必ず書いてください。五七五句ですよ！ （やざきあい 作家 桜花学園大学教授） |
◆「矢崎藍の付けてみませんかコラムのそもそも」
このユニークなる（伝統と現代の衝突じゃぞ！）中日新聞の付け句コラムは１９９０年にはじまっています。最初は朝刊の「辛口診断」という時評コラムの中でした。矢崎藍担当コラムで、ある日、付け句の話題を紹介して、「あなたも付けてみませんか」と、（いわば言葉の綾で）文章をしめたところ、読者から付け句がきたのです！ 掲載するとまたきた！ やっほっほ、どーしよー！ とうれしい悲鳴が続いて、とうとう「募集、しめきり、発表」という形をとるようになりました。ちなみに最初の記念すべき前句と付け句は
恋なんてどうでもいいと古稀は言い 敏女
それでも赤い薔薇が好きなの、 しげる
でした。くわしくは『連句恋々』（筑摩書房）に書いてあります。
１９９６年に「矢崎藍の付けてみませんか」として独立、日曜日の読者総合特集ページへ。。
１９９８年に（金）夕刊に引っ越し、文化欄「矢崎藍付けてみませんか」となり、現在に至っています。
募集１０日後しめきりがふつうで、５、６回のコラムの中で発表となります。「今を、共に、語る！」という対話的付け句コラムの内容は終始変わっていません。
『平成付け句交差点』（筑摩書房）はこの欄の精選付け句集です