「矢崎藍の付けてみませんか」コラムーーは中日新聞(金)夕刊掲載です
可能な地域のかたはーですが)ぜひ金曜夕刊を読んでくださいね!


中日新聞ではもう9年も読者と矢崎藍との付け句遊びが続いています。募集コラムのあと、付け句を紹介しながら今の世の中のことをおしゃべりしています。基本的にコラムですので、入選順位、賞のようなものはありません。。付け句は現時点では活字メディアでの募集ですのではがきでご参加ください。(これまでにも、なぜか大阪、神戸、埼玉などから常連さんの付け句はがきをいただいています)
◆1999の付け句と発表「あと一年で二千年なり」1/8−−2/12) 「働きすぎてちょっと疲れて」(2/26ー4/9)


◆今回の前句は「不覚にもまた恋をしそうな」です!

発表7『さらわれる』                              6月4日(金)
 (不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
お誘いはしない約束だったけど       祝多
夫にも子にも秘密の片想い        紫陽花
流されてあなたのもとへ流されて      由

 はっは。困りましたね。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
ときどきはノラになりたい育児ママ    さとみ
窓際だ粗大ゴミだと言われても      平沢博
 それぞれに不覚をとる理由はありますが。
  (不覚にもまた恋をしそうな) 
キャンドルと赤のワインとステーキと 赤胴鈴之助
せつなさがワイングラスに揺れている  岡本静香
知らぬまに髪に触るの彼の癖        尚子
  
あぶないあぶない。
   (不覚にもまた恋をしそうな)
頼られて身の上話聞いた夜       鈴木辰彦
おだやかに抱きとめられた腕の中      直美

もー、だめ!
   (不覚にもまた恋をしそうな)
脈をとる柔らかい手に夢心地       眠り猫
看護士はキムタクに似たいい男       サク

 ハッピーな病院ですこと。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
突然の桜吹雪は魔法だった?      平野明子
一陣の風よあなたにさらわれる       みき

 (やざきあい 作家 桜花学園大学教授)

タイトル――――――――――以下原稿24×26

発表6 「おまけの人生」                5月28日(金)
(不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
スニーカー若葉の中にまぎれいる    加藤博
薫風のうなじに吹いて胸騒ぎ        逍

 美しい五月。でも、
予感だけいつものように片想い     伊藤友久
踏む足もそろりそろりと曲がり道   木村れいみ

臆病になるのはなまじ経験があるから。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
突然の電話が昔にひき戻す       近藤徳枝
 むむむ。
傷ついて忘れたはずの彼なのに     永田真希
久し振り素敵な彼はもと夫       松山みわ

いま、どうしてますか。
バツいちに緞帳上がる第二幕     平松由美江
二幕目は脚本にない不倫劇       山田敏彦

 人生何幕やってもいいですけどね。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
あのときもあなたは白球追っていた  廣田千恵子
 心に焼き付いている青春。
八十路過ぎ初恋の人の声若く       沈丁花
 もとめる心は永遠に変わらないけれど、
高齢化社会を妙に納得し        伊藤千敏
 人と人の関係が確実に変わりつつあるのも確か。。
   (不覚にもまた恋をしそうな)
これからはおまけの人生行くふたり   福島道子
   (やざきあい 作家 桜花学園大学教授)
発表5『深庇』 5月21日 
不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
ハイキング藪うぐいすの鳴く山へ    伊藤紘美
湯の音がせせらぎになる露天風呂    だるま窯

夏の自然が、心と体の自然を呼んでいます。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
燕の巣作り励む深庇          土方資富
つがうもののいじらしさ。深庇の暗い巣に外光は明るい。燕よ、燕、ひとときを生きる。人もまた同じ生の営み。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
背を向けて草引いている息遣い     仲川昌一
女――ですよね、これは。帽子に手袋、日差しにすっかり身をおおい、顔も見えぬ。しゃがんだまま大きいお尻
が向こうへ移動する。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
ビール手にいっきに飲み干す喉仏   上田寿美子
これは男――。見ていた自分に気づいた女ははっとして目をそらす。夜の街の喧噪。暑い!
  (不覚にもまた恋をしそうな)
みどり透けくずおれそうなところ天     元子
どうしましょう。ああーー、ため息をつくのは女のほう。涼しい風。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
砂浜に残した足跡波に消え       小林きね
 思いはひととき。されど永遠。
    (やざきあい 作家 桜花学園大学教授)

発表4 『違う曜日に』             5月14日(金
 (不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
留守電の消せない君のメッセージ      じゅんこ
行間に漂うぬくもりEメール              靖

と人をつなぐ機械たち。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
淋しさに負けそうな夜鳴る電話         みのり
携帯を唯一鳴らしてくれる彼      ユビパッチン

 いい彼なの!
僅かでもオマケをされて感激し      藤田道子
給料日前におごってくれる君        岩崎尚子

あのねえ。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
単身の街でボタンを付けあぐね        信
もう自分で付けなさいって!
さいの目が手さばきもよくみそ汁に   仲川昌一
豆腐切りみそ汁作る主夫もどき        Aky

豆腐のみそ汁は妻の魅力か、夫の魅力か。そのうちね、
男女家庭均等法ができるかも。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
夫とは違う曜日にダンスをし     前出悦子
「私は日曜、主人は金、土曜に習ってます」と。夫婦、新
鮮に見つめ合って生きる工夫もこれから。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
タンゴ組む何もないけど明日がある   加古敬子
国際線さまようごとし人の波        正一   
 

   
(やざきあい 作家 桜花学園大学教授)
発表3『君色に』            5月7日(金)
 (不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
目に青葉ノースリーブにシースルー    としお
まぶしい夏がきましたね。
薫風にセーラー服がよく似合う     安藤隆久
あっ彼だルーズソックスたくしあげ    超まじ

  (不覚にもまた恋をしそうな)
前列で講義を受けた目が合った     甲斐保子
カラオケのマイク持つ手のしなやかに   みちを
君色にむこうの空が染まってる     岡田沙織

ああ、たいへん!
  (不覚にもまた恋をしそうな)
神様に運命の人か問うてみる        ゆみ
 進むべきや否や。   
赤い糸信じたばかりに今の俺       尾羽半
――という先輩の意見もあります。 
  (不覚にもまた恋をしそうな)
誰にでも優しいのだと知りつつも     草笛奏
あんなにも苦しんだのを忘れたか       石

 うん。お友達でいたほうが楽かもよ。でもーー。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
さよならの君のやさしき微笑みに   伊藤智恵子
「おやすみ」と送ってきびす返す君     明子

この瞬間がたまらない。
(不覚にもまた恋をしそうな)
振り返る君の笑顔は蟻地獄       田中淑男
    (やざきあい 作家 桜花学園大学教授)


発表2『アニメヒーロー』        4月30日(金) 
  (不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
度肝抜く開幕ダッシュドラゴンズ    山内鐐造
孫ほどの松阪クンに胸熱く        あや子

 野球ファンも可愛いですけど。
新作のアニメヒーローポーズきめ      捨松
二次元の恋もけっこう真剣なんですよ。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
いちごちゃんチョコケーキさんアイスさん  才子
男なんていらない瞬間の乙女。
 (不覚にもまた恋をしそうな) 
菜の花とどちらがきれい前を行く    近藤大造
 出た! 自信のある女。
銀髪が青葉に映えて目礼す        みずほ
青葉に負けぬ魅力は精神性にあり。
   (不覚にもまた恋をしそうな) 
一時間お茶のむはずが五時間も      まりこ
「ほんとの話です。ただだいぶ昔の話なのが残念」
と、まりこさん。今度は七時間でね。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
だめよだめそんなやさしい言葉だめ   吉田志可
腕の中ひきよせられて熱い息      大畑杉子

 ふっふ。これはこれは。
   (不覚にもまた恋をしそうな)
駆け寄ってキスの嵐を受けた僕     吉田和代
へっへ、これ、犬ですって。ごめん。
       (やざきあい 作家・桜花学園大学教授)

発表1『申し上げ』                                4月23日(金)
 (不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
春風にキラリと光る片ピアス      塚本益美
忘れずに今年も咲いたチューリップ  大坪十三子

 生きとし生ける物わくわくするいまです。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
イヤリング付けて外してまた付けて     睦子
いざゆかん二の腕おなかひきしめて     京子

京子さんのお目あては八人組みのダンスグループとか。「私だってスリムになって踊り
たいの」と。
 (不覚にもまた恋をしそうな)
キツイ目にすらりと伸びた脚線美    聖きよみ
ムキムキでかかと落としの格闘家   スガマニア
最近のビジュアル系に目移りし       おゆ
やさしくて顔がこい人タイプです   たけちゃん

 ビジュアル系はロックバンドの見た目美男。「顔がこい」って彫りが深い感じらしいです
よ。女が男を観賞する時代になりました。
  (不覚にもまた恋をしそうな)
おじいさん私のタイプはおじいさん 森のくまさん 
 ええ、好みは実にいろいろで、人生

はたのしい。
  (不覚にもまた恋をしそうな) 
喪服着たあなたに悔み申し上げ     田淵義明
 ああ、しっとりしてますねえ。
五十年さかのぼれそうおぼろ月    小田原一雄
シャワー室ガラスに浮かぶ古女房    福間正治 
  (やざきあい 作家 桜花学園大学教授

しめきりですよ!                                         4月16日(金)  
(不覚にもまた恋をしそうな  聖子)
先週も言ってなかった?お母さん   ちさと
ハハハ。恋がこんなふうにオープンに語られるのはいいですね。恋は、誰にでもある自然な心。自分にない未知のものに向かう心の動き。バイタリティーのもと。不覚をかさねましょ。もっとも、
 (不覚にもまた恋をしそうな)
青ひげのもの憂げな目に射抜かれて みの虫アッパ
 という怖い物語もはがき第一便のてっぺんにありました。恋は人さまざま。(不覚にもまた恋をしそうな)への付け句しめきりは十八日。お忘れなく。
この四月三日には町田市での五十嵐浜藻を偲ぶ連句会に行ってきました。浜藻は文化文政期の女性俳諧師で、一茶とも同座して連句を巻いています。歴史文学賞作家の別所真紀子さんによれば、きっと「話し出す前から笑いだしているような」ひとだったとか。ゆかりの町田市南大谷天神社の石段をあがってゆくと、小じんまりした本殿を満開の花が包み、浜藻さんが通りすぎたようでした。
 ひとひらの蝶見失うまひるかな   藍
  なのはたばたけひたすらに夢  魚乙
    (水沢魚乙捌箙「ひとひらの蝶」の巻より)
さて、連句のホームページを開けば、海をこえての鎖連句がまっさかり。こちらもおのぞきあれ。
    http://village.infoweb.ne.jp/~megitune/  
(やざきあい 作家 桜花学園大学教授)
募集「不覚にも」                          4月9日(金)
  (働き過ぎてちょっと疲れて)
チョコレート苺ケーキに栗饅頭    仲川昌一
ペンネーム使いラジオと炬燵番    倉知武好
何度目かの引っ越しをまた考えよう  鈴木正子

――今回もたくさんの付け句をありがとうございました。さて、お待ちかね、つぎの募集ですよ! もう花咲く春。心と体のパワーアップをはかり、恋句でまいりましょう。
 不覚にもまた恋をしそうな  聖子
この七七句に五七五句を付けてくださいな

 (不覚にもまた恋をしそうな)
別れ際淡く微笑む君の目に    晃子
は、いかにも今の優しい若者の雰囲気ですね。恋は意図せず、向こうからくる。それはどんなとき? どんな場所? どんな相手?(あなたのお好みは?)
小説みたいに想像してみてください。ええ、もちろんこの際ホントの話でも。発表が五月にかかりますので、新緑、青葉、若葉などの季語を使って、みずみずしい初夏の句もどうぞ。   
   (不覚にもまた恋をしそうな)
ゴキブリをはっしと叩くたのもしさ   藍
 付け句ははがきで〒460―8511中日新聞文化部「付けてみませんか」係宛。四月十八日までに。ペンネームの方も、本名とご住所は必ず書いてください。五七五句ですよ!
    (やざきあい 作家 桜花学園大学教授)

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「矢崎藍の付けてみませんかコラムのそもそも」
このユニークなる(伝統と現代の衝突じゃぞ!)中日新聞の付け句コラムは1990年にはじまっています。最初は朝刊の「辛口診断」という時評コラムの中でした。矢崎藍担当コラムで、ある日、付け句の話題を紹介して、「あなたも付けてみませんか」と、(いわば言葉の綾で)文章をしめたところ、読者から付け句がきたのです! 掲載するとまたきた! やっほっほ、どーしよー! とうれしい悲鳴が続いて、とうとう「募集、しめきり、発表」という形をとるようになりました。ちなみに最初の記念すべき前句と付け句は
     恋なんてどうでもいいと古稀は言い  敏女
       それでも赤い薔薇が好きなの、  しげる

でした。くわしくは『連句恋々』(筑摩書房)に書いてあります。
 1996年に「矢崎藍の付けてみませんか」として独立、日曜日の読者総合特集ページへ。。       
 1998年に(金)夕刊に引っ越し、文化欄「矢崎藍付けてみませんか」となり、現在に至っています。
 募集10日後しめきりがふつうで、5、6回のコラムの中で発表となります。「今を、共に、語る!」という対話的付け句コラムの内容は終始変わっていません。
『平成付け句交差点』(筑摩書房)はこの欄の精選付け句集です